「業務の自動化をしたいけど、プログラミングはハードルが高い」
そう感じている人に紹介したいのが n8n(エヌエイトエヌ)だ。ブロックを繋ぐだけで複雑な自動化ワークフローが作れるノーコードツールで、MakeやZapierに似ているが、自分のサーバー(またはローカルPC)で動かせるのが最大の強みだ。
この記事では、Docker Desktop を使って自分の PC に n8n をインストールする手順を丁寧に解説する。コマンドを実行する黒い画面(ターミナル)に慣れていない人でも、コピペで進められるよう説明する。
n8nとはどんなツールか
まず n8n が何者なのかを簡単に説明しておく。
n8n は ワークフロー自動化ツールだ。「何かが起きたら(トリガー)、何かをする(アクション)」という処理をビジュアルで組み立てられる。
使用例:
- Gmailに特定のメールが届いたら、内容をGoogleスプレッドシートに書き込む
- フォームに回答があったら、Slackに通知してDiscordにも投稿する
- 毎朝9時に天気情報を取得して、LINEで送る
- GitHubのPRがマージされたら、Notionのタスクを完了にする
400以上のサービスに対応したノードが用意されており、それを繋いでいくだけでこれらが実現できる。
MakeやZapierとの違い:
MakeやZapierは月額課金のSaaSで、実行回数に上限がある。n8n はオープンソースで自己ホスト可能なので、ローカルやVPSで動かせば実行回数は無制限、コストも最小限に抑えられる。
前提条件の確認
始める前に以下を確認しておこう。
Windows の場合:仮想化が有効か確認
Dockerを動かすには、CPUの仮想化機能が有効になっている必要がある。
Ctrl + Shift + Escでタスクマネージャーを開く- 「パフォーマンス」タブをクリック
- 「CPU」を選択して、右下に「仮想化: 有効」と表示されていればOK
「無効」と表示されている場合は BIOS/UEFI 設定から有効にする必要がある。PCの電源を入れる際に Delete か F2 キーを押してBIOS画面に入り、「Virtualization Technology」「VT-x」「SVM」などの項目を探して有効にする。
Mac の場合
M1/M2/M3(Apple Silicon)でも Intel Mac でも Docker Desktop は動作する。追加の設定は不要だ。
必要なもの
- PCの管理者権限(インストールに必要)
- 安定したインターネット接続(Docker イメージのダウンロードで数百MB使う)
手順1:Docker Desktop のインストール
n8n は「Docker コンテナ」という形式で配布されている。Docker Desktop はこのコンテナを動かすためのソフトだ。
ダウンロード
Docker公式サイト(https://www.docker.com/products/docker-desktop/)にアクセスして、自分の OS に合ったインストーラーをダウンロードする。
- Windows:
Docker Desktop Installer.exe - Mac(Apple Silicon):
Docker Desktop for Mac (Apple Silicon).dmg - Mac(Intel):
Docker Desktop for Mac (Intel).dmg
インストール
Windows の場合:
- ダウンロードした
.exeを実行する - 「Use WSL 2 instead of Hyper-V」にチェックが入っているか確認する(WSL 2 が推奨)
- 画面の指示に従って「OK」を押していく
- インストール後にPCを再起動する
Mac の場合:
.dmgを開いて、Docker のアイコンを Applications フォルダにドラッグする- Applications フォルダから Docker を起動する
- 初回は権限の確認が出るので、パスワードを入力する
起動確認
インストール後に Docker Desktop が起動する。画面左下のステータスが 「Engine running」(緑) になれば準備完了だ。
ターミナル(Windows は PowerShell、Mac はターミナル.app)で確認することもできる。
docker --version
バージョン番号が表示されれば問題ない。
手順2:n8n のデータ保存用ディレクトリを作る
Docker で動かすアプリは、デフォルトではコンテナを削除するとデータも消える。n8n で作ったワークフローが消えないよう、ローカル PC にデータ保存用のフォルダを作って Docker に紐付ける。
Windows の場合:
mkdir C:\n8n_data
PowerShell を開いて上記を実行する。C:\n8n_data というフォルダが作られる。
Mac / Linux の場合:
mkdir -p ~/.n8n
ホームディレクトリに .n8n フォルダを作る。
手順3:n8n を起動する
いよいよ n8n を起動する。ターミナルに以下のコマンドを貼り付けて実行する。
Windows(PowerShell)の場合:
docker run -d `
--name n8n `
-p 5678:5678 `
--restart unless-stopped `
-v C:\n8n_data:/home/node/.n8n `
-e GENERIC_TIMEZONE="Asia/Tokyo" `
-e TZ="Asia/Tokyo" `
n8nio/n8n
Mac / Linux の場合:
docker run -d \
--name n8n \
-p 5678:5678 \
--restart unless-stopped \
-v ~/.n8n:/home/node/.n8n \
-e GENERIC_TIMEZONE="Asia/Tokyo" \
-e TZ="Asia/Tokyo" \
n8nio/n8n
各オプションの意味:
| オプション | 意味 |
|---|---|
-d | バックグラウンドで起動(ターミナルを閉じても動き続ける) |
--name n8n | コンテナの名前を「n8n」にする |
-p 5678:5678 | PCの5678番ポートをn8nのポートに繋げる |
--restart unless-stopped | PCを再起動したらn8nも自動起動(手動で止めた場合を除く) |
-v ~/.n8n:/home/node/.n8n | ローカルフォルダをデータ保存先に指定 |
-e GENERIC_TIMEZONE | n8nのタイムゾーンを東京に設定 |
初回実行時は Docker Hub から n8n のイメージ(数百MB)をダウンロードするため、数分かかる場合がある。長い英数字の ID が表示されてコマンドが終了すれば成功だ。
起動しているか確認するには:
docker ps
n8n という名前のコンテナが Up 状態になっていれば動いている。
手順4:ブラウザでアクセスして初期設定
ブラウザを開いて以下のURLにアクセスする。
http://localhost:5678
n8n の初期セットアップ画面が表示される。
- メールアドレスとパスワードを入力する(ローカル環境用のアカウントを作る)
- 任意の情報を入力して「Get started」をクリック
- n8n のダッシュボードが表示されれば完了
これで n8n が動いている状態になった。
基本的な操作:最初のワークフローを作る
インストールできたら、まず簡単なワークフローを作って n8n の雰囲気をつかんでほしい。
サンプル:定時に Webhook を呼んで通知する
- ダッシュボードの「+ New workflow」をクリック
- キャンバス上の「+」ボタンをクリックしてノードを追加
- 「Schedule Trigger」を選択(定期実行のトリガー)
- 実行間隔を設定(例:Every day at 9:00)
- 「+」をクリックして次のノードを追加
- 「Code」ノードを選んで、実行したい処理を書く(またはHTTP Requestで外部APIを呼ぶ)
- 右上の「Save」でワークフローを保存
- 「Active」トグルをオンにすると自動実行が始まる
n8n には視覚的なエラー表示と実行ログがあるので、どのノードで何が起きたかが一目でわかる。
コンテナの管理コマンド
日常的に使うコマンドをまとめておく。
# n8n を停止する
docker stop n8n
# n8n を起動する(一度停止した場合)
docker start n8n
# n8n を再起動する
docker restart n8n
# n8n のログを確認する
docker logs n8n
# ログをリアルタイムで追う
docker logs -f n8n
# n8n のバージョンを確認
docker exec n8n n8n --version
n8n をアップデートする
新しいバージョンが出たときのアップデート手順:
# 最新イメージを取得
docker pull n8nio/n8n
# 古いコンテナを停止・削除(データは消えない)
docker stop n8n
docker rm n8n
# 新しいコンテナを起動(手順3と同じコマンドを実行)
docker run -d \
--name n8n \
-p 5678:5678 \
--restart unless-stopped \
-v ~/.n8n:/home/node/.n8n \
-e GENERIC_TIMEZONE="Asia/Tokyo" \
-e TZ="Asia/Tokyo" \
n8nio/n8n
データは -v で指定したローカルフォルダに保存されているので、コンテナを削除してもワークフローは消えない。
ローカルで動かす限界と次のステップ
ローカルPCで n8n を動かす場合、PC の電源を切ると n8n も止まる。
「夜中に自動実行させたい」「常時起動の自動化が欲しい」という場合は、VPS(仮想プライベートサーバー)で動かすのが現実的な次のステップだ。
月額数百円〜千円程度の VPS で同じ Docker コマンドを実行するだけで、24時間稼働の n8n 環境が作れる。国内では ConoHa VPS、さくらのVPS、海外では DigitalOcean や Vultr が一般的な選択肢だ。
VPS での n8n セットアップについては、別記事で解説する予定だ。
まとめ
Docker Desktop を使った n8n のローカルインストール手順をまとめる。
- Docker Desktop をインストールして起動する
- データ保存用フォルダを作る(Windows:
C:\n8n_data、Mac:~/.n8n) docker runコマンドで n8n を起動する- ブラウザで
http://localhost:5678にアクセスして初期設定する
この4ステップで n8n が動く環境が手に入る。
n8n は使い始めると、「こんな繰り返し作業もなくせるんだ」という気づきが次々と出てくる。まずはローカルで試してみて、使えそうだと感じたら本番環境(VPS)に移行するという進め方がスムーズだ。