NordVPNはサーバー規模と監査実績、Surfsharkは価格と無制限接続、ExpressVPNはルーターハードウェアと透明性で優位。 3社ともAES-256暗号化、RAM-onlyサーバー、独立ノーログ監査を備えており、基本性能に差はない。違いは料金・独自機能・プラットフォーム対応に出る。
VPNを選ぶとき、NordVPN・ExpressVPN・Surfsharkの3社は必ず候補に上がる。しかし「どれがおすすめ!」という記事は多くても、技術的な根拠で比較した記事は少ない。
この記事では、料金・速度・セキュリティ・ストリーミング対応・独自機能を一つずつ比較し、用途別にどれを選ぶべきかを解説する。
3社の概要
まず全体像を把握する。
| 項目 | NordVPN | ExpressVPN | Surfshark |
|---|---|---|---|
| 運営会社 | Nord Security(パナマ法人) | Kape Technologies(英領バージン諸島) | Nord Security(オランダ法人) |
| サーバー数 | 9,000+ | 3,000+ | 4,500+ |
| 対応国数 | 130 | 105+ | 100 |
| 同時接続数 | 10台 | 10〜14台(プランによる) | 無制限 |
| 独自プロトコル | NordLynx | Lightway | なし(WireGuard標準) |
| RAM-onlyサーバー | 全サーバー | 全サーバー(TrustedServer) | 全サーバー(Nexus) |
3社ともRAM-onlyサーバーを採用しており、電源を切ればデータは消える。技術基盤のレベルは高い。
違いは サーバー規模(NordVPNが圧倒的)、同時接続数(Surfsharkが無制限)、プロトコル(NordVPNとExpressVPNは独自実装あり)に出る。
料金プラン比較
3社とも複数のプランを提供している。2年プラン(最安)で比較する。
2年プラン月額(USD)
| ティア | NordVPN | ExpressVPN | Surfshark |
|---|---|---|---|
| VPNのみ | $3.39 (Basic) | $3.49 (Basic) | $1.99 (Starter) |
| VPN + セキュリティ | $3.89 (Plus) | $4.49 (Advanced) | $2.69 (One) |
| フルパッケージ | $5.39 (Complete) | $7.49 (Pro) | $4.29 (One+) |
最安はSurfshark($1.99/月)。ただし、プランに含まれる機能が異なる。価格は2026年3月時点 — 最新は各公式サイトで確認してほしい。
各プランに含まれる機能
NordVPN:
- Basic — VPN + Threat Protection(DNSレベルブロック)
- Plus — Basic + Threat Protection Pro + NordPass(パスワードマネージャー)
- Complete — Plus + NordLocker 1TB(クラウドストレージ)
ExpressVPN:
- Basic — VPN + Lite Protection(広告・悪意あるサイトブロック)。同時接続10台
- Advanced — Basic + パスワードマネージャー + Identity Defender。同時接続12台
- Pro — Advanced + 専用IPアドレス。同時接続14台
Surfshark:
- Starter — VPN + CleanWeb + メールエイリアス
- One — Starter + Antivirus + Alert + Search
- One+ — One + Incogni(データブローカー削除サービス)
支払い方法
3社とも以下に対応:
- クレジットカード / デビットカード
- PayPal
- 暗号通貨(Bitcoin等)
NordVPNとSurfsharkはAmazon Payにも対応。
返金保証
3社とも 30日間の返金保証 を提供している。実質的に30日間無料で試せる。
速度とパフォーマンス
VPNの速度はサーバーの距離、時間帯、回線環境で大きく変わる。特定の数値を出しても再現性がないため、ここでは 傾向 を示す。
プロトコルの違い
| NordVPN | ExpressVPN | Surfshark | |
|---|---|---|---|
| 推奨プロトコル | NordLynx(WireGuardベース) | Lightway(wolfSSL使用) | WireGuard |
| 特徴 | Double NAT でプライバシー強化 | Rust実装で軽量・高速 | 標準WireGuardをそのまま採用 |
| 難読化 | NordWhisper(新プロトコル) | Lightway(難読化対応) | Camouflage Mode |
NordLynxとLightwayはどちらもWireGuardと同等以上の速度を出す。Surfsharkは独自プロトコルを持たないが、WireGuard自体が十分に高速だ。
速度の傾向
複数の独立テスト(2025〜2026年)を総合すると:
- NordVPN — 近距離サーバーで速度低下3〜5%。9,000台以上のサーバーがあるため、混雑の少ないサーバーを見つけやすい
- ExpressVPN — Lightway Turbo(Windows限定)で最大1,479Mbps。ただし標準Lightwayでも十分高速
- Surfshark — 3社の中では速度がやや低めだが、日常利用には十分(4Kストリーミングに必要な25Mbpsは余裕で超える)
4Kストリーミングに必要な速度
Netflixが推奨する4Kストリーミングの最低速度は 25Mbps 。3社ともこの基準を大幅に上回る。速度で選ぶ必要があるのは、100Mbps以下の回線で最大限のパフォーマンスが欲しい場合だけだ。
セキュリティとプライバシー
暗号化とプロトコル
3社ともAES-256暗号化を使用し、WireGuard系プロトコルを提供している。暗号化の強度に実用上の差はない。
2026年現在、3社ともポスト量子暗号化に対応済みだ。NordVPNはNordLynxにML-KEMを統合、ExpressVPNはLightwayにML-KEMを追加、SurfsharkはWireGuardでポスト量子暗号化をサポートしている(現在macOS・Linux・Androidのみ、iOS・Windowsは対応予定)。量子コンピュータによる将来の解読リスクに対し、3社とも先手を打っている。
ノーログ監査
| NordVPN | ExpressVPN | Surfshark | |
|---|---|---|---|
| 監査機関 | PwC → Deloitte | KPMG + Cure53 | Deloitte + Cure53 + SecuRing |
| 監査回数 | 6回 | 23件(アプリ監査含む) | 複数回 |
| 最新監査 | 2025年(Deloitte / ISAE 3000) | 2025年(KPMG) | 2026年(SecuRingインフラ監査、1月) |
| RAM-only | 全サーバー(2022年〜) | 全サーバー(TrustedServer) | 全サーバー(Nexus) |
ExpressVPNの「23件」 はノーログ監査だけでなく、アプリのセキュリティ監査やペネトレーションテストを含む合計。ノーログに特化した監査はKPMGの3回。
NordVPNの6回 はすべてノーログポリシーに特化した監査。Big 4(PwC、Deloitte)が担当しており、ISAE 3000基準で実施されている。
3社とも独立監査を受けており、ノーログの信頼性は高い。
管轄地域
| NordVPN | ExpressVPN | Surfshark | |
|---|---|---|---|
| 法的管轄 | パナマ | 英領バージン諸島 | オランダ |
| Five Eyes | 非加盟 | 非加盟 | Nine Eyes加盟国 |
Surfsharkはオランダに法人を置いているため、Nine Eyes情報共有同盟の管轄下にある。法的にはデータ提出を求められる可能性がある。ただし、RAM-onlyサーバーでログを保持していないため、提出するデータが存在しない。
NordVPNとExpressVPNは、Five/Nine/Fourteen Eyes管轄外に法人を置いている。
Kill SwitchとDNSリーク対策
3社とも全プラットフォームでKill Switchを提供。DNSリーク対策も標準装備。この点での差はない。
ストリーミング対応
| サービス | NordVPN | ExpressVPN | Surfshark |
|---|---|---|---|
| Netflix | 複数リージョン対応 | 複数リージョン対応 | 30+リージョン対応 |
| Amazon Prime Video | 対応 | 対応 | 対応 |
| Disney+ | 対応 | 対応 | 対応 |
| Hulu(米国) | 対応 | 対応 | 対応 |
| BBC iPlayer | 対応 | 対応 | 対応 |
3社とも主要ストリーミングサービスに対応している。
ストリーミング技術の違い
- NordVPN — SmartPlay(VPN暗号化 + Smart DNSの自動統合)。設定不要
- ExpressVPN — MediaStreamer(Smart DNS機能)。VPNアプリが使えないデバイスでも利用可能
- Surfshark — Smart DNS機能あり。Netflixは30以上のリージョンに対応と公表しており、リージョン数は3社で最多
ストリーミングは3社とも実用的に問題ない。特定サーバーがブロックされた場合は、サーバーを変更すれば解決する。
独自機能の比較
各サービスにしかない機能を整理する。
NordVPN
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| SmartPlay | ストリーミングに最適化されたDNS + VPN統合技術 |
| Meshnet | 複数デバイスをプライベートネットワークで接続。LANゲームやファイル共有に使える |
| Threat Protection Pro | VPN接続なしで動作するマルウェア・広告ブロッカー(Plus以上) |
| Double VPN | 2つのサーバーを経由する二重暗号化 |
| Onion over VPN | VPN + Torの統合。最大限の匿名性 |
| NordWhisper | 制限ネットワーク向けの新しい難読化プロトコル |
Meshnetは2025年に一度廃止が発表されたが、ユーザーの反発を受けて撤回され、オープンソース化が決定した。基盤ライブラリ libtelio はGitHubで公開されている。
ExpressVPN
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| Lightway | 独自プロトコル。wolfSSL使用、Rustで再実装。軽量で高速 |
| Lightway Turbo | Windows限定の超高速モード。マルチレーントンネリングで最大1,479Mbps |
| TrustedServer | RAM-onlyサーバー技術のブランド名 |
| Aircove | ExpressVPN内蔵のWi-Fiルーター。ルーターレベルでVPN接続 |
| Advanced Protection | 広告ブロック + ペアレンタルコントロール(Advanced/Pro) |
Aircoveは 専用ハードウェアとしてルーターを販売 している点がユニーク。VPNアプリが使えないデバイス(ゲーム機、スマートTV等)もルーター経由で保護できる。
Surfshark
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| 無制限同時接続 | デバイス数制限なし。家族や複数デバイスユーザーに有利 |
| Nexus | SDN(ソフトウェア定義ネットワーク)による全サーバー統合ルーティング |
| IP Rotator | 接続を切らずにIPアドレスを定期的に自動変更 |
| Dynamic MultiHop | 任意の2サーバーを選んでダブルVPN。経路を自由に選択可能 |
| CleanWeb | 全プランに含まれる広告・トラッカー・マルウェアブロッカー |
| Bypasser | Split Tunneling機能。macOS・iOS対応(NordVPN・ExpressVPNは非対応) |
Surfsharkの強みは 無制限同時接続 と macOS/iOSのSplit Tunneling対応 。iOSでSplit Tunnelingに対応しているのは3社中Surfsharkだけだ。
Split Tunneling対応状況
| プラットフォーム | NordVPN | ExpressVPN | Surfshark |
|---|---|---|---|
| Windows | 対応 | 対応 | 対応 |
| macOS | 非対応 | 対応 | 対応 |
| Android | 対応 | 対応 | 対応 |
| iOS | 非対応 | 非対応 | 対応 |
| Linux | ポート/サブネットのみ | 対応 | — |
macOSでSplit Tunnelingを使いたい場合、NordVPNは選択肢から外れる。iOSではSurfsharkのBypasserのみが対応している。
用途別の選び方
「どれがベストか」は用途で変わる。以下のフローで選ぶ。
バランス重視 → NordVPN
- 9,000台以上のサーバーでストリーミング・速度・安定性のバランスが良い
- SmartPlayによるストリーミング最適化が自動で動く
- Meshnet、Double VPN、Onion over VPNなど機能が豊富
- 6回のノーログ監査と RAM-onlyサーバーでセキュリティも強固
おすすめプラン: NordVPN Plus($3.89/月・2年)— Threat Protection ProとNordPassが付くため、VPN以外のセキュリティも強化できる。同時接続は10台。
価格重視・家族利用 → Surfshark
- 最安$1.99/月(2年プラン)で3社中最安
- 同時接続数が無制限 — 家族全員のデバイスを1つの契約でカバーできる
- macOS/iOSでもSplit Tunnelingが使える
- IP Rotator、Dynamic MultiHopなどプライバシー機能も充実
ルーターVPN・Apple環境 → ExpressVPN
- Aircoveルーター でVPN未対応デバイスも丸ごと保護
- macOSのSplit Tunneling対応
- Lightway Turboで Windows環境の速度は3社最速クラス
- 23件の第三者監査で透明性が高い
世界最大級のVPN。高速・安全・使いやすい
- 6,400+サーバー(111カ国)
- 独自プロトコルNordLynx(WireGuardベース)
- Threat Protection Pro(広告・マルウェアブロック)
よくある質問
NordVPNとSurfsharkは同じ会社?
そう。2022年2月にNord SecurityがSurfsharkを統合した。親会社は同じだが、アプリ・サーバー・開発チームは独立して運用されている。ExpressVPNはKape Technologies傘下で、別の会社だ。
3社の中で一番速いのはどれ?
3社とも4Kストリーミング(25Mbps以上)には余裕で対応する。NordVPNのNordLynxは近距離サーバーで速度低下3〜5%。ExpressVPNのLightway Turbo(Windows限定)は最大1,479Mbpsを謳う。実用上、3社の速度差はほとんどのユースケースで体感できない。
中国で使えるのはどれ?
NordVPNは難読化サーバーとNordWhisperでDPIベースのブロックを回避可能。ExpressVPNのLightwayは難読化を内蔵。SurfsharkにはCamouflage Modeがある。3社とも中国での利用を想定しているが、Great Firewallは常に進化しているため、確実な保証はどのVPNにもない。
無料トライアルはある?
3社とも従来型の無料トライアルは提供していない。ただし、全社 30日間の返金保証 がある。先に支払い、30日以内に満足できなければ返金をリクエストする形だ。
更新時の料金は初回と同じ?
違う。3社とも更新時は料金が上がる。広告に表示される価格(例: Surfsharkの$1.99/月)は初回契約の割引価格で、2回目以降の更新では高くなる。契約前に更新価格を確認し、自動更新のオフを検討してほしい。
ルーターでVPNを使えるのはどれ?
3社ともルーターへの手動設定(OpenVPNまたはWireGuard)に対応している。ExpressVPNはAircoveという専用Wi-Fiルーターを販売しており、手動設定なしでVPNが使える。NordVPNとSurfsharkはASUS・Netgear・TP-Link等の対応ルーター向けにセットアップガイドを提供している。
ポスト量子暗号化に対応しているのは?
3社とも対応している。NordVPNとExpressVPNはML-KEM(NISTが標準化したポスト量子アルゴリズム)を全プラットフォームでサポート。Surfsharkは現在macOS・Linux・Androidで対応しており、iOS・Windowsは対応予定だ。
まとめ
3社の比較結果を一覧にする。
| 項目 | NordVPN | ExpressVPN | Surfshark |
|---|---|---|---|
| 料金(2年最安) | $3.39/月 | $3.49/月 | $1.99/月 |
| サーバー数 | 9,000+ | 3,000+ | 4,500+ |
| 同時接続 | 10台 | 10〜14台 | 無制限 |
| 独自プロトコル | NordLynx | Lightway | なし |
| ノーログ監査 | 6回(Deloitte) | 23件(KPMG等) | 複数回(Deloitte等) |
| macOS Split Tunneling | 非対応 | 対応 | 対応 |
| 強み | バランス・サーバー規模 | ルーター・透明性 | 価格・無制限接続 |
3社ともVPNとしての基本性能は高い。暗号化、ノーログ監査、RAM-onlyサーバーは全社が備えている。
違いが出るのは サーバー規模 、 価格 、 同時接続数 、 独自機能 だ。自分の用途に合ったサービスを選べば間違いない。
関連記事:
- NordVPN完全レビュー:料金・安全性・速度を技術者が検証
- NordVPNの使い方:初期設定からトラブル対処まで
- NordVPNは危険?安全性を技術的に検証する
- NordVPNでNetflixを見る方法と見れないときの対処法
- VPNプロトコル徹底比較:WireGuard・OpenVPN・IKEv2の仕組みと選び方
- 無料VPNは危険?実際の事件と安全な選び方
参考ソース・公式サイト:
- NordVPN — サーバー一覧 / 料金 / ノーログ監査
- ExpressVPN — サーバー一覧 / 料金 / KPMG監査
- Surfshark — サーバー一覧 / 料金 / Deloitte監査
- WireGuardプロトコル — NordLynxとSurfsharkのVPNプロトコルの基盤
- NIST FIPS 203 (ML-KEM) — 3社が採用するポスト量子暗号化規格