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AWS MediaConvert vs FFmpeg:コスト比較

AWS MediaConvertとFFmpeg自前運用のコストを具体的に比較。月間処理量別の損益分岐点と、それぞれのメリット・デメリットを解説する。

by omitsu16 min read

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目次

月500本(5,000分)未満ならAWS MediaConvertが安い。それ以上ならFFmpeg自前運用が勝つ。 損益分岐点は月4,000〜5,000出力分あたりだ。

動画変換パイプラインを構築するとき、「AWS MediaConvert を使うべきか、FFmpeg を自前で動かすべきか」は避けて通れない問いだ。どちらも強力だが、コスト構造がまったく異なる。処理量が少ないうちはマネージドサービスが楽で安く、ある閾値を超えると自前運用が圧倒的に安くなる。

この記事では、AWS公式料金ページと実際のVPSプロバイダの料金をもとに損益分岐点を計算し、判断基準を整理する。

2つの選択肢

まず前提を揃えておく。

AWS MediaConvert はフルマネージドの動画トランスコードサービスだ。サーバー管理は不要で、APIを叩くだけで動画変換ができる。スケールアップ・スケールダウンも自動で、運用負荷は最小限になる。

FFmpeg 自前運用 は、VPS や EC2 インスタンス上に FFmpeg をセットアップして動画変換を行う方法だ。さくらのVPSなら月¥590〜でFFmpegを動かせる。FFmpegが初めてならインストールガイドを先に読んでおくといい。インフラの管理は自分で行う必要があるが、処理量が増えても費用は固定費中心になる。

両者の違いをひと言でまとめると、MediaConvert は従量課金、FFmpeg 自前は固定費 だ。この差がコスト比較の核心になる。

MediaConvert$0.0135/min (1080p)従量課金損益分岐点~500本/月固定費FFmpeg 自前~$58/月 固定

AWS MediaConvertの料金体系

AWS MediaConvert の料金は、処理した動画の 出力時間 に基づく従量課金だ。リージョン・コーデック・解像度によって単価が変わる。

代表的な単価(Professional Tier、東京リージョン):

解像度単価(/分)
4K (UHD)$0.054
1080p$0.0135
720p$0.0075
SD$0.0045

1080p 100本/月の計算例

1本あたり平均10分の動画を月100本処理するケースで計算する。

  • 出力時間: 10分 × 100本 = 1,000分/月
  • 1080p 単価: $0.0135/分
  • 月額: 1,000分 × $0.0135 = $13.50/月

これに加えて、入力・出力ファイルの S3 ストレージ料金と、データ転送料金が別途かかる。1080p の動画 100本(各 1GB 程度)を想定すると:

  • S3 ストレージ: ~100GB × $0.025/GB = $2.50/月
  • データ転送: ケースによるが $1〜5 程度

合計: 月約 $17〜21 程度

この規模なら MediaConvert は非常に安価で、追加の運用コストもかからない。

AWS CLI で MediaConvert ジョブを投入するサンプル

bash
aws mediaconvert create-job \
  --endpoint-url https://XXXX.mediaconvert.ap-northeast-1.amazonaws.com \
  --role arn:aws:iam::123456789012:role/MediaConvertRole \
  --settings file://job-settings.json

ジョブ設定は JSON ファイルで管理し、--settings で渡す。解像度やビットレートの指定もすべてこの JSON に記述する。

FFmpeg自前運用のコスト構造

FFmpeg を自前で動かす場合、コストはいくつかの要素に分解される。

VPS / サーバー費用

動画エンコードは CPU を大量に消費する。1080p のリアルタイムエンコードには 4コア以上を推奨する。

プロバイダスペック月額備考
さくらのVPS4コア/8GB¥3,227(約 $22)国内サーバー、日本語サポート
Hetzner CX324共有vCPU/8GB約 €7(約 $8)共有コア — 継続負荷でスロットル
Vultr4 vCPU/8GB約 $40Regular Cloud Compute
DigitalOcean4 vCPU/8GB約 $48Basic Droplet(共有CPU)
AWS EC2 c5.xlarge4 vCPU/8GB約 $124専用コンピュート最適化

コスト重視なら Hetzner が最安だが、共有 vCPU は動画エンコードのような持続的な CPU 負荷でスロットルされることがある。安定したエンコード処理が必要なら専用コアのプランを選ぶべきだ。国内サーバーで日本語サポートがほしいなら、さくらのVPSが現実的な選択肢になる。詳しいサーバー選定と FFmpeg セットアップ手順は FFmpeg VPS エンコードサーバー構築 で解説している。

ストレージ費用

変換前後のファイルを一時保存するストレージが必要だ。VPS のローカルディスクで賄う場合は追加料金がかからないが、S3 や Cloudflare R2 を使う場合は別途費用がかかる。

  • Cloudflare R2: $0.015/GB/月(エグレス無料)
  • AWS S3: $0.025/GB/月(データ転送別途)

人件費(隠れコスト)

月2時間のメンテナンス(パッチ適用、ログ確認、障害対応)を想定すると:

  • エンジニア時給 $50 として: 2時間 × $50 = $100/月

これが最も見落とされやすいコストだ。

月間コスト合計の目安

項目最小構成標準構成
VPS(共有vCPU)$8(Hetzner)$48(DigitalOcean)
ストレージ (100GB)$0(ローカル)$1.5(R2)
帯域(エグレス)$0〜5$5〜20
メンテナンス人件費$50$100
合計~$58~$170

損益分岐点はどこか

固定費中心の FFmpeg 自前運用が有利になるのは、処理量が増えたときだ。月額固定費を ~$58(最小構成)として計算すると:

月間処理量(1080p)MediaConvertFFmpeg自前(最小)
50本(500分)$6.75 + S3 ≈ $9~$58
100本(1,000分)$13.50 + S3 ≈ $17~$58
500本(5,000分)$67.50 + S3 ≈ $75~$58
1,000本(10,000分)$135 + S3 ≈ $145~$58
2,000本(20,000分)$270 + S3 ≈ $285~$58〜80

損益分岐点は月約 400〜500本(4,000〜5,000分) あたりだ。それ以下なら MediaConvert、それ以上なら FFmpeg 自前の方がコスト効率がよくなる。

ただしこれは人件費を $50/月(月1時間のメンテ)まで削減できた場合の試算だ。人件費が $100/月かかるなら合計は ~$108 になり、分岐点は 800〜1,000本まで上がる。

MediaConvertが向いているケース

MediaConvert は以下のようなケースで本領を発揮する。

処理量が少ない、または変動が大きい場合。月100本程度なら月額 $17 程度で済む。サーバーを常時稼働させるよりはるかに安い。処理量が月によって 50本になったり 500本になったりする場合も、従量課金のメリットが大きい。

インフラ管理のリソースがない場合。エンジニアの人件費が高い、またはサーバー管理が得意でないチームにとって、マネージドサービスの価値は金銭的なコストを超える。

エンコード品質への要件が高い場合。MediaConvert は放送グレードのコーデック対応(H.264、H.265、AV1 など)と細かいビットレート制御が可能で、品質面では申し分ない。

FFmpeg自前が向いているケース

FFmpeg 自前運用が有利なケースは明確だ。

処理量が安定して多い場合。月500本を超えてくると、固定費の FFmpeg 自前が圧倒的に安くなる。月1,000本なら年間で $1,000 以上の差が出ることもある。

カスタムコーデックや特殊処理が必要な場合。MediaConvert が対応していないフィルタ処理、独自のコーデック設定、GPU エンコード(NVENC など)を使いたい場合は FFmpeg しか選択肢がない。

オンプレミスや特定のリージョン要件がある場合。データを特定の国・施設から出せない規制がある場合、クラウドサービスは使えない。

長期的なコスト予測が重要な場合。従量課金は処理量が増えると青天井になる。固定費の方が予算管理がしやすい。

よくある質問

AWS MediaConvertの料金は1分あたりいくら?

東京リージョン(ap-northeast-1)の場合、Professional Tier で 1080p AVC(H.264)は $0.0135/分 だ。4Kなら $0.054/分、720pなら $0.0075/分。HEVC や AV1 などのプレミアムコーデックや HDR 処理は追加料金がかかる。料金はリージョンによって異なるので、最新情報は AWS 公式料金ページ で確認してほしい。

FFmpeg自前のほうが安くなるのはどのくらいの処理量から?

月400〜500本(1080p 10分の動画で4,000〜5,000出力分)あたりが損益分岐点だ。これはVPS費 ~$8 + メンテ $50 = ~$58/月の最小構成を前提にしている。メンテナンス人件費が $100/月なら、分岐点は800〜1,000本に上がる。

AWSでMediaConvertの代わりにFFmpegを動かせる?

動かせる。EC2、ECS、Lambda(コンテナ経由)のいずれでもFFmpegを実行できる。分単位の従量課金がなくなる代わりにインフラ管理が必要になるが、すでにAWSエコシステムに慣れているならいい選択肢だ。

GPU(NVENC)エンコードでコストは下がる?

NVENC や QuickSync を使えば、CPUエンコードの5〜10倍の速度で処理できる。同一ビットレートでの品質は若干落ちるが、スループット重視のパイプラインではサーバー台数を減らせる = 固定費が直接下がる。

FFmpeg自前で見落としがちなコストは?

見落とされやすいのは3つ: (1) メンテナンス人件費(パッチ適用、アップグレード、障害対応)、(2) エグレス/帯域費用(出力ファイルの配信時)、(3) ストレージ費用(ローカルディスクではなくオブジェクトストレージを使う場合)。最低でも月1〜2時間のエンジニア作業時間を予算に含めるべきだ。

MediaConvertはFFmpegと同じコーデックに対応している?

対応していない。MediaConvert は H.264、H.265、VP8、VP9、AV1 などの主要コーデックに対応しているが、FFmpeg は数百のコーデックとフィルタをサポートしている。特殊なフォーマットやカスタムフィルタチェーンが必要ならFFmpeg一択だ。

Azure Media Servicesはどうなった?

Azure Media Services は2024年6月30日に廃止された。マネージド変換サービスのベンダーロックインリスクの具体例だ。MediaConvert を選ぶ場合でも、変換ロジックをインターフェースで抽象化して、必要に応じてプロバイダを切り替えられる設計にしておくといい。

まとめ

AWS MediaConvert と FFmpeg 自前運用のどちらが正解かは、処理量と運用リソース次第だ。

  • 月500本(5,000分)未満 → MediaConvert が安くて楽
  • 月500本(5,000分)以上 → FFmpeg 自前の方がコスト効率がよい
  • カスタム要件・規制対応 → FFmpeg 一択

僕自身は32blogの動画処理が月50本以下だった頃に MediaConvert を使い始めた。月$9程度で運用負荷ゼロ、文句なしだった。処理量が300本を超えたあたりでコスト計算し直してVPSに移行したら、月額費用が60%以上下がった。数字は正直だ。

まずは今の処理量と成長予測を数字で出してみることを勧める。損益分岐点を把握した上で選択すれば、後から後悔することは少ない。

FFmpeg 自前環境の構築手順は FFmpeg VPS エンコードサーバー構築 にまとめている。FFmpegの基本操作から知りたい場合はFFmpeg使い方ガイドも参考にしてほしい。


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