32blogby StudioMitsu
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AWS MediaConvert vs FFmpeg:コスト比較

AWS MediaConvertとFFmpeg自前運用のコストを具体的に比較。月間処理量別の損益分岐点と、それぞれのメリット・デメリットを解説する。

FFmpegAWSMediaConvertコスト比較動画処理
目次

動画変換の基盤を選ぶとき、「AWS MediaConvert を使うべきか、FFmpeg を自前で動かすべきか」という問いは避けて通れない。どちらも強力だが、コスト構造がまったく異なる。処理量が少ないうちはマネージドサービスが楽で安く、ある閾値を超えると自前運用の方が圧倒的に安くなる。

この記事では、具体的な数字を使って損益分岐点を計算し、どちらを選ぶべきかの判断基準を僕が整理する。

2つの選択肢

まず前提を揃えておく。

AWS MediaConvert はフルマネージドの動画トランスコードサービスだ。サーバー管理は不要で、APIを叩くだけで動画変換ができる。スケールアップ・スケールダウンも自動で、運用負荷は最小限になる。

FFmpeg 自前運用 は、VPS や EC2 インスタンス上に FFmpeg をセットアップして動画変換を行う方法だ。インフラの管理は自分で行う必要があるが、処理量が増えても費用は固定費中心になる。

両者の違いをひと言でまとめると、MediaConvert は従量課金、FFmpeg 自前は固定費 だ。この差がコスト比較の核心になる。

AWS MediaConvertの料金体系

AWS MediaConvert の料金は、処理した動画の 出力時間 に基づく従量課金だ。リージョン・コーデック・解像度によって単価が変わる。

代表的な単価(Professional Tier、東京リージョン):

解像度単価(/分)
4K (UHD)$0.054
1080p$0.0135
720p$0.0075
SD$0.0045

1080p 100本/月の計算例

1本あたり平均10分の動画を月100本処理するケースで計算する。

  • 出力時間: 10分 × 100本 = 1,000分/月
  • 1080p 単価: $0.0135/分
  • 月額: 1,000分 × $0.0135 = $13.50/月

これに加えて、入力・出力ファイルの S3 ストレージ料金と、データ転送料金が別途かかる。1080p の動画 100本(各 1GB 程度)を想定すると:

  • S3 ストレージ: ~100GB × $0.025/GB = $2.50/月
  • データ転送: ケースによるが $1〜5 程度

合計: 月約 $17〜21 程度

この規模なら MediaConvert は非常に安価で、追加の運用コストもかからない。

AWS CLI で MediaConvert ジョブを投入するサンプル

bash
aws mediaconvert create-job \
  --endpoint-url https://XXXX.mediaconvert.ap-northeast-1.amazonaws.com \
  --role arn:aws:iam::123456789012:role/MediaConvertRole \
  --settings file://job-settings.json

ジョブ設定は JSON ファイルで管理し、--settings で渡す。解像度やビットレートの指定もすべてこの JSON に記述する。

FFmpeg自前運用のコスト構造

FFmpeg を自前で動かす場合、コストはいくつかの要素に分解される。

VPS / サーバー費用

動画エンコードは CPU を大量に消費する。1080p のリアルタイムエンコードには 4コア以上を推奨する。

プロバイダスペック月額
Hetzner CX324コア/8GB約 $15
Vultr4コア/8GB約 $24
DigitalOcean4コア/8GB約 $48
AWS EC2 c5.xlarge4コア/8GB約 $124

コスト重視なら Hetzner や Vultr が選択肢になる。詳しいサーバー選定と FFmpeg セットアップ手順は FFmpeg VPS エンコードサーバー構築 で解説している。

ストレージ費用

変換前後のファイルを一時保存するストレージが必要だ。VPS のローカルディスクで賄う場合は追加料金がかからないが、S3 や Cloudflare R2 を使う場合は別途費用がかかる。

  • Cloudflare R2: $0.015/GB/月(エグレス無料)
  • AWS S3: $0.025/GB/月(データ転送別途)

人件費(隠れコスト)

月2時間のメンテナンス(パッチ適用、ログ確認、障害対応)を想定すると:

  • エンジニア時給 $50 として: 2時間 × $50 = $100/月

これが最も見落とされやすいコストだ。

月間コスト合計の目安

項目最小構成標準構成
VPS$15$48
ストレージ (100GB)$0(ローカル)$1.5(R2)
帯域(エグレス)$0〜5$5〜20
メンテナンス人件費$50$100
合計~$65~$170

損益分岐点はどこか

固定費中心の FFmpeg 自前運用が有利になるのは、処理量が増えたときだ。月額固定費を $65(最小構成)として計算すると:

月間処理量(1080p)MediaConvertFFmpeg自前(最小)
50本(500分)$6.75 + S3 ≈ $9$65
100本(1,000分)$13.50 + S3 ≈ $17$65
500本(5,000分)$67.50 + S3 ≈ $75$65
1,000本(10,000分)$135 + S3 ≈ $145$65
2,000本(20,000分)$270 + S3 ≈ $285$65〜80

損益分岐点は月約 400〜500本(4,000〜5,000分) あたりだ。それ以下なら MediaConvert、それ以上なら FFmpeg 自前の方がコスト効率がよくなる。

ただしこれは人件費を $50/月(月1時間のメンテ)まで削減できた場合の試算だ。人件費が $100/月かかるなら分岐点は 800〜1,000本まで上がる。

MediaConvertが向いているケース

MediaConvert は以下のようなケースで本領を発揮する。

処理量が少ない、または変動が大きい場合。月100本程度なら月額 $17 程度で済む。サーバーを常時稼働させるよりはるかに安い。処理量が月によって 50本になったり 500本になったりする場合も、従量課金のメリットが大きい。

インフラ管理のリソースがない場合。エンジニアの人件費が高い、またはサーバー管理が得意でないチームにとって、マネージドサービスの価値は金銭的なコストを超える。

エンコード品質への要件が高い場合。MediaConvert は放送グレードのコーデック対応(H.264、H.265、AV1 など)と細かいビットレート制御が可能で、品質面では申し分ない。

FFmpeg自前が向いているケース

FFmpeg 自前運用が有利なケースは明確だ。

処理量が安定して多い場合。月500本を超えてくると、固定費の FFmpeg 自前が圧倒的に安くなる。月1,000本なら年間で $1,000 以上の差が出ることもある。

カスタムコーデックや特殊処理が必要な場合。MediaConvert が対応していないフィルタ処理、独自のコーデック設定、GPU エンコード(NVENC など)を使いたい場合は FFmpeg しか選択肢がない。

オンプレミスや特定のリージョン要件がある場合。データを特定の国・施設から出せない規制がある場合、クラウドサービスは使えない。

長期的なコスト予測が重要な場合。従量課金は処理量が増えると青天井になる。固定費の方が予算管理がしやすい。

まとめ

AWS MediaConvert と FFmpeg 自前運用のどちらが正解かは、処理量と運用リソース次第だ。

  • 月500本(5,000分)未満 → MediaConvert が安くて楽
  • 月500本(5,000分)以上 → FFmpeg 自前の方がコスト効率がよい
  • カスタム要件・規制対応 → FFmpeg 一択

まずは今の処理量と成長予測を数字で出してみることを勧める。僕自身も最初は MediaConvert から始めて、処理量が増えた段階で FFmpeg 自前に切り替えた。損益分岐点を把握した上で選択すれば、後から後悔することは少ない。

FFmpeg 自前環境の構築手順は FFmpeg VPS エンコードサーバー構築 にまとめているので、そちらも参考にしてほしい。