「Vercelが高い」「Netlifyはオワコン」「Cloudflareが最強」——Redditではこういう極論が飛び交う。でも実際にどれが正解かは、プロジェクトの規模と要件で変わる。
この記事では、Vercel・Netlify・Cloudflare Pagesの3プラットフォームを 公式価格と公式ドキュメント に基づいて比較する。「なんとなく高い」ではなく、月間PV別の具体的なコストシミュレーションで判断材料を出す。
3プラットフォームの立ち位置
まず根本的な違いを押さえておく。この3社は同じ「ホスティング」でも、出自と思想がまったく異なる。
Vercel — Next.jsの開発元。Next.jsのすべての機能がVercel上で最も正確に動く。App Router、ISR、Middleware、PPR(Partial Prerendering)のような最新機能は、Vercelで最初にサポートされる。その代わり、従量課金モデルがアグレッシブで、帯域超過や関数実行で予想外の請求が来ることがある。
Netlify — JAMstackの先駆者。2015年からの歴史があり、Hugo・Gatsby・Astroなどの静的サイトジェネレーターとの相性が良い。2025年9月にクレジットベースの課金に移行した。Next.jsサポートはOpenNextアダプター経由で、Vercelより一歩遅れる。
Cloudflare Pages — インフラ企業のホスティングサービス。世界330拠点以上のCDNネットワークが最大の強み。帯域が全プランで無制限・無料 というのは他の2社にない圧倒的な優位点。ただしNext.jsサポートはまだ発展途上で、完全なファーストクラスではない。
料金比較:無料枠と従量課金
Vercel
| Hobby(無料) | Pro($20/月) | |
|---|---|---|
| 帯域 | 100 GB/月 | 1 TB/月 |
| 超過帯域 | サイト停止 | $0.15/GB |
| Function Invocations | 100万/月 | 100万/月(超過 $0.60/100万) |
| Fluid Active CPU | 4時間/月 | $20クレジットで相殺(超過 $0.128/時間〜) |
| 商用利用 | 不可 | 可 |
| 月次クレジット | — | $20 |
Proの$20は固定費ではなく プラットフォーム利用料 + $20クレジット だ。クレジットを使い切ると従量課金に切り替わる。
Netlify
2025年9月にクレジットベース課金に移行した。
| Free | Personal($9/月) | Pro($20/メンバー/月) | |
|---|---|---|---|
| 月次クレジット | 300 | 1,000 | 3,000/チーム |
| 商用利用 | 可 | 可 | 可 |
クレジットの消費レート:
- デプロイ: 15 credits/回
- 帯域: 10 credits/GB
- Compute: 5 credits/GB-hour
- リクエスト: 3 credits/1万リクエスト
Cloudflare Pages + Workers
| Free | Paid($5/月〜) | |
|---|---|---|
| 帯域 | 無制限 | 無制限 |
| 静的リクエスト | 無制限 | 無制限 |
| Workers リクエスト | 10万/日 | 1,000万/月(超過 $0.30/100万) |
| CPU時間 | 10ms/呼び出し | 3,000万ms/月(超過 $0.02/100万ms) |
| ビルド | 500回/月 | 5,000回/月(Pages Pro $20/月) |
| 商用利用 | 可 | 可 |
帯域が無制限・無料。 これがCloudflareの最大の差別化ポイントだ。Vercelでは1TBを超えると$0.15/GBが発生し、Netlifyではクレジットを消費する。Cloudflareではどれだけトラフィックが来ても帯域コストはゼロ。
Next.jsサポートの現実
3社のNext.jsサポートには明確な差がある。
| 機能 | Vercel | Netlify | Cloudflare |
|---|---|---|---|
| App Router | ネイティブ | OpenNext経由 | OpenNext / Vinext(実験的) |
| SSR | 完全 | 対応 | 対応(Workers上) |
| ISR | 完全 | 対応 | 対応(KV caching) |
| Middleware | 完全 | 対応 | 対応 |
| PPR | 完全 | 実験的 | 未確認 |
| Image Optimization | ネイティブ | 追加設定が必要 | 対応(制限あり) |
generateStaticParams | 完全 | 対応 | Vinextでは未対応 |
Vercelが唯一のファーストクラスサポート。 Next.jsの新機能はVercelで最初に動き、Netlify/CloudflareはOpenNextアダプター経由で追従する。Next.jsのメジャーアップデート直後は、Netlify/Cloudflareで動かないケースがある。
Next.js以外のフレームワーク
Astro、Nuxt、SvelteKit、Remixなどを使うなら、3社ともほぼ同等にサポートしている。Next.jsへの依存度が低いプロジェクトでは、Cloudflareの帯域無料やNetlifyのForms機能が差別化になる。
帯域・DDoS・セキュリティ
帯域コスト
| Vercel Pro | Netlify Pro | Cloudflare Paid | |
|---|---|---|---|
| 含まれる帯域 | 1 TB/月 | クレジット制 | 無制限 |
| 100GB超過時 | $15 | クレジット消費 | $0 |
| 500GB超過時 | $75 | クレジット消費 | $0 |
| 1TB超過時 | 従量課金開始 | クレジット消費 | $0 |
帯域コストでは Cloudflareが圧勝 する。画像が多いサイト、動画を埋め込むサイト、グローバルにトラフィックがあるサイトでは、この差が月額数十ドルの違いになる。
DDoS対策
| Vercel | Netlify | Cloudflare | |
|---|---|---|---|
| 自動DDoS軽減 | あり(全プラン) | あり(全プラン) | あり(全プラン、330+拠点) |
| WAF | Enterprise | Enterprise | あり(全プラン) |
| Attack Challenge Mode | あり | — | あり |
| エッジ拠点数 | 数十箇所 | 数十箇所 | 330箇所以上 |
Cloudflareはインフラ企業だけあって、DDoS対策は業界最強クラスだ。Vercel/Netlifyも基本的な保護は全プランで提供しているが、規模と拠点数で差がある。
実際に起きた事例:
- Netlify $104K事件(2024年2月): 大量のファイルダウンロードで帯域が爆発し、$104,500の請求が発生。CEOがHacker Newsで全額免除を発表した
- Vercel Cara事件: アプリがバイラル化し、Vercel Functionsの請求が約$96,000に達した
- 僕のサイト: Vercel HobbyプランでFluid Active CPUの4時間/月に到達。ボットが存在しないURLを叩いてSSRが走ったのが主因
Cloudflareでは帯域が無制限のため、DDoSでの帯域爆発→高額請求のシナリオが構造的に起きない。
月間PV別コストシミュレーション
公式価格をもとに、Next.jsの静的サイト(1ページあたり約1MB)を想定して計算する。
前提条件:
- 静的生成がメイン(SSRは最小限)
- Middleware使用(next-intl等のi18n)
- 1ページあたりの転送量: 約1MB
- Function Invocations: PVの1.5倍(Middleware + API Route)
月間1万PV(個人ブログ)
| Vercel | Netlify | Cloudflare | |
|---|---|---|---|
| 帯域消費 | ~10 GB | ~10 GB | ~10 GB |
| プラン | Hobby(無料)※非商用のみ | Free(無料) | Free(無料) |
| 月額 | $0 | $0 | $0 |
| 商用なら | Pro $20 | Free $0 | Free $0 |
1万PVなら3社とも無料枠に収まる。ただしVercelは商用利用ならPro必須。
月間10万PV(成長中のメディア)
| Vercel Pro | Netlify Pro | Cloudflare Paid | |
|---|---|---|---|
| 帯域消費 | ~100 GB | ~100 GB | ~100 GB |
| Function Invocations | ~15万/月 | クレジット制 | ~15万/月 |
| 月額 | $20(クレジット内) | $20 | $5 |
| 帯域超過 | なし(1TB内) | クレジット消費 | なし(無制限) |
Cloudflareが最安。Vercel/Netlifyはほぼ同額だが、Vercelの方がNext.jsサポートが手厚い。
月間100万PV(大規模サイト)
| Vercel Pro | Netlify Pro | Cloudflare Paid | |
|---|---|---|---|
| 帯域消費 | ~1 TB | ~1 TB | ~1 TB |
| 帯域超過コスト | $0(ギリギリ1TB内) | クレジット大量消費 | $0(無制限) |
| Function Invocations | ~150万/月 | クレジット制 | ~150万/月 |
| 超過Function | $0.30(50万×$0.60/100万) | クレジット消費 | $0(1,000万内) |
| 推定月額 | $20〜40 | $20+追加クレジット購入 | $5 |
100万PVでもCloudflareは$5で済む。Vercelは帯域がギリギリで、少しでも超えると$0.15/GBが加算される。Netlifyはクレジット不足で追加購入が必要になる可能性が高い。
どれを選ぶべきか
Vercelを選ぶべきケース
- Next.jsの最新機能を使いたい(PPR、Server Actions等)
- git pushだけでデプロイしたい(DX最優先)
- チーム開発でプレビューデプロイを多用する
- 月間100万PV以下で、Spend Managementを正しく設定できる
Netlifyを選ぶべきケース
- Astro/Hugo/Gatsbyなどの静的サイト がメイン
- Formsやidentity等の組み込み機能を使いたい
- 無料プランで商用利用したい(Vercel Hobbyは不可)
- Next.jsの高度な機能(PPR等)を使わない
Cloudflare Pagesを選ぶべきケース
- 帯域コストをゼロにしたい
- 画像が多い、または月間PVが大きいサイト
- DDoS対策を最強レベルにしたい
- Next.jsの基本機能(App Router + SSR + ISR)で十分
VPSを選ぶべきケース
上記3社はすべて従量課金要素がある。完全に固定費で運用したいなら、さくらのVPS や XServer VPS でのセルフホストが選択肢になる。月額¥500〜で帯域制限なし。ただしインフラ管理は自分でやる必要がある。詳しくはCoolify + VPSでNext.jsをセルフホストする全手順を参考にしてほしい。
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まとめ
| 観点 | Vercel | Netlify | Cloudflare |
|---|---|---|---|
| Next.jsサポート | 最強 | OpenNext経由 | 発展途上 |
| 帯域コスト | $0.15/GB超過 | クレジット制 | 無料 |
| 無料枠の商用利用 | 不可 | 可 | 可 |
| DDoS対策 | 良い | 良い | 最強 |
| 月額(10万PV) | $20 | $20 | $5 |
| DX(開発体験) | 最高 | 良い | 良い |
「どれが最強か」ではなく「自分のプロジェクトに何が必要か」で選ぶ。Next.jsの最新機能とDXならVercel、コスト最優先ならCloudflare、静的サイト + 組み込み機能ならNetlify。
従量課金プラットフォームのコスト構造を深く理解したい場合はエッジコンピューティングのコスト構造比較も参考になる。
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